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2020年度の研究開発活動 #2

台風による破堤で浸水、泥の堆積が発生したリンゴ畑の状態を衛星データより把握し、
防災と復興に役に立つシステムを目指す

2019年に衛星データ利用を利用した事業開発を目指して羽生田鉄工所内プロジェクトチームが発足しました。

きっかけとなったのは内閣府委託事業に長野地域の企業3社、ワイナリー2社と衛星関連2団体で提案しました、衛星データを活用したワイン用ブドウ精密栽培システムの高度化が採択されたことでした。

2年目の2020年度は前年の結果を踏まえて利用範囲を広げ次の活動を行いました。

2019年10月台風により千曲川の堤防が一部決壊し弊社周辺でリンゴ畑を中心に大きな災害が発生しました。
弊社は駐車場が浸水しただけで済みましたが、より破堤箇所に近い圃場では浸水が引いた後、泥の堆積が残りそれを片付ける大規模な復旧作業が必要になりました。
また機械の入れない家屋内の泥片づけは手作業になり、全国から多くのボランティアの方々が来ていただき作業をされていました。
中には海外の方も団体で参加していただき、休憩時間には泥を片付けた場所にブルーシート貼ってお祈りをしていた姿は印象深く心に残りました。

2020年の春先にはほとんどの圃場で泥片づけは終わっていましたが今後の生育には不安もありました。
そこで弊社も微力ながら衛星データを活用した防災、減災への研究開発を行うことにしました。
前年のワイン用ブドウの研究のころからコンタクトをいただいていた長野高専の先生に相談したところ生徒さんも参加して共同研究として2020年度取り組むことになりました。
6月に実施計画を立てて開始しましたがコロナ禍の状況で課外活動ができなくなったり時期によっては校舎への立ち入りができなくなる時期もあり、試行錯誤がつづきました。このように新しい研究などを始める時はWEB会議だけでは厳しいと感じましたが、出来ることを考えるように努めました。
その結果、当初予定していた光学衛星での災害把握に加えてSAR衛星を使っての研究にも取組ことになりました。

光学衛星の画像では、浸水し泥の堆積した圃場を中心に植生の活性度を示すNDVIの値に変化がはっきりと表れていたので浸水域とNDVIの関係を調査しました。
災害前後のNDVI変化が一定以上の範囲と国土地理院の浸水範囲推定図はほぼ一致することが確認できた。
この地域の土地利用がリンゴ等の圃場が多いという特性があることが条件になりますが、植生の変化から浸水域を推定できる可能性が確認された。

SAR衛星の画像利用は技術的に難易度が高く今回はとにかく挑戦してみるという考え方で取り組みました。
SARで可能になる分析と地域での課題を整理し、リンゴ圃場で堆積した泥の深さを分析し、搬出が必要な泥の量を算出することを目標としました。SARの代表的な分析の一つにインターフェロメトリ(InSAR) 解析を行い地盤沈下をマッピング化することがあります。
この解析方法を使って堆積した泥の深さの分析を試みることをSAR分析の専門家の方々に相談しましたが、かなり難しい取り組みであることが分かりました。

まずやってみよう精神で長野高専の先生、生徒さんと一緒に試行錯誤しながら分析を進めました。
使用できる分析ソフトや衛星画像に縛りが多くあるなかで今年度の結果は泥の堆積した範囲をラフに推定できる程度となりました。
しかしながら、精度を上げることに必要な課題はある程度把握できたので時間と資金を確保できれば可能性は大いにあることは確認できました。
事業化を考えると課題が多くありますが、SARの活躍範囲の可能性は大いにあり地域社会の貢献も考え産学連携の意味がある活動と考えています。

SAR画像 災前後の差分

赤の囲みは推定浸水域